文明の十字路=中央アジアの歴史(講談社学術文庫・2007年)
学術文庫を2冊読んでみて気づきましたが、文庫のタイトルに学術と書いてあるだけあり、
新書よりレベルが高いので初心者向けではないかな
今度新書で同ジャンルのものを読んでみるのもいいかもですね
舞楽の源流は中央アジアにあり、先のとがった靴などが特徴
黒海周辺のスキタイ系遊牧民が西南アジア古代文明と接触。
車と青銅器を知りBC1200年ごろ騎馬技術を開発した
アレクサンドロスや滅亡前のギリシャ人が中央アジアに植民をしていた
月氏やサカ(塞)はイラン系・クシャン帝国は仏教文化の伝播に重要
古代の東西貿易の重要ポイントがガンダーラ
唐の中央アジア支配は現地オアシスに結構任せていた
13世紀は史上最大の征服者チンギスハン、
その時代が終わると山脈を境に再び東西トルキスタンが分かれ現代まで続く
16世紀にコサックの移動が始まる
19世紀に帝政ロシアがゲオックテペを陥落させたことは西洋側に非難された
などロシア進出は批判が割と多めな印象
一つ未アップデート項目がありましたね、
ブドウが奈良時代に中国からもたらされたとのことありますが
縄文土器にヤマブドウの種が付着しており、
葡萄酒は縄文時代に作られている見方が最近有力になっています。
源氏と坂東武士(吉川弘文館歴史文化ライブラリー・2007年)
光る君の後の時代を東国武士中心に解説する
関東地方に住んでいるので地名がで入りやすいかも
まあ外国の地名に比べれば日本はどこでもわかりやすいですが
東国豪族の紛争調停者として河内源氏が東国に派遣され定着したことが
鎌倉幕府成立につながる。
武蔵は牧(秩父・小野・立野は勅使牧)が多く、東山道と東海道を結ぶ陸上交通と、
東京湾に接続する河川交通路が縦横に交錯する軍事貴族に魅力の土地だった
源頼信は和泉式部の夫の兄弟を母に持つ。
地方軍事貴族は摂関家などと私的関係を結び調停を頼んでいた、この体制は道長の頃できた
平忠常の乱、いすみ市が拠点
宇都宮氏(八田氏)義家に従って下向したことから
在地化した京武者より高次の武家の棟梁が必要となり出てくるのが鎌倉殿
陸奥はアザラシの皮や鷲の羽、矢の生産地で武士にとっては手に入れたい場所
義朝は同族を駆逐して勢力争いにピリオドを打ったともいえる
坂東武士のルーツは平安前期に群盗蜂起鎮圧兵力として配置された王臣軍人貴族と
王朝国家体制下徴税のための暴力装置として下向、
国衙に基盤を築いた受領郎等(五位以下含む)
征夷将軍軍は藤原秀衡などが任じていた鎮守府代将軍を超え
非常時に天皇に代わって軍事動員をできる権限を持つ
1189年の奥州合戦は源氏の東国支配の正当性と東国武士団の源氏に対する従属関係を確認させ、
全国規模の動員も行い政治的宣伝も意図していた
作者のまとめポイントとしては東国武士は西国でも活躍していて、
戦闘形態に大きな相違はなかったということだそうです。
しかしトップが西国に行っていたとはいえ武士団はあくまで東国で発達したわけなので、
個人の騎射騎馬能力は東国の方が長けていたのではと思いつつ。
古代日本の官僚(中公新書・2021年)
読みやすいが古代官僚のサボタージュ、ほぼ同じ調子なので若干冗長かも
基本的には元伴造の中下層豪族であり地盤があるのでサボっても問題なかった
光る君でやっていたが五位と六位の間には壁がある。とはいえ六位でも十分特権はある
国司で地方赴任すると役得で収賄放題もやってましたね
平民=白民から春宮坊の舎人など特権職を得るために頑張る人がいたが、
舎人の職を得たとたんサボり始める
郡司から中央官人を狙う人も
現代の皇室への敬慕は近代以降のもので、
それ以前は国家という概念がないので国家元首としての天皇像はない
特権に群がるのは古代・現代に通じるものはあるが
自国は古代からこうだから仕方ないで済ませていいのか?と考える
古代の天皇は災厄の責任を負っていたのでその側近も災害復興に尽力、
自らの給与カットなどをしていたのは今より優れていますね
日本中世の非農業民と天皇(岩波文庫・2024年)
網野先生本をもっと読んでみようということで
岩波文庫・論文を読んでいる感じで学術的、脚注豊富。
非農業民はむしろ古代は特権階級だったが、
中世の間に多数を占める農民との立場の逆転が起きたことが
近世以降の被差別部落にもつながっている
中世の研究がもっと必要だが、
非農業民の資料は正式な文書となっていないものも多いので覚悟と情熱がいる
非農業民の自由通行権や免田の割当が特権だったが、
古代の天皇から任じられたということが担保となっていた
そしてそれは時代を経ると伝説・形骸化していき、
公領となっていた山河海も特定人物の所有となるものも増えてきた
かなり大まかなあらすじはこんな感じでしょうか。
自分のレベルではもうちょい平易な本を先に読んだ方が良いかも。
でも戦前戦中生まれの諸研究者の方々の空気感も書かれていて、
今の時代に読むことは大切だなと思います