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お茶のこ彩々別館・古代史・神社のお話

日本の裏古代史(主に縄文~古墳時代。上古代の重要文献『ホツマツタヱ』)勉強中の一般人が、勉強で感じたことや神社を参拝した際の感想などを載せていこうと思います

「高地文明」中公(2021年)

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大河のほとりで「四大文明」が発祥・発展:最上級の文明とされる通説への反証。
「四大文明」は今はさすがに信じる人はいない「騎馬民族制服説」
を広めた方が提言した日本独特の説らしいですね。
著者はインディオの伝統的生活を長期、幾度にわたる滞在で長年研究しており、
文献や遺物だけではない民族学を駆使した考古学の主旨のもとに書かれています。
アフリカ・チベット・メソアメリカ・アンデスを大河に全く劣ることのない
四つの高地文明と見なしています。

緯度の低い熱帯高地は標高が高くても適度な温かさがあり、冷涼で伝染病が起こりにくく
快適だったところから今も大都市が営まれています。
スペイン人の持ち込んだ伝染病でインディオが全滅したという一般的歴史観がありますが、
その現象が起こったのは低地だけで高地では伝染病は流行らなかったそうですね。

通説的文明の条件としては都市と文字の使用という条件があるとのことで、
高地文明はその条件を満たしていないため一般的に文明にカウントされていないそうです。

メソアメリカは文字がありましたがアンデスにはなかったんですね。
日本でも使われている紐で数を数える方法を駆使していたそうで。
しかし第9代インカ王・パチャクティのイラストの服に
文字らしきものが…全くなかったわけではないんじゃ(P190)

世界の栽培作物の原産地は高地文明の範囲が多いそうで、
このゾーンには日本も含まれます。
高地は大気が薄く紫外線が多いため突然変異がおこりやすいのも
栽培種開発に役立ったといわれています。
日本は中部高地の縄文最盛期「文明」がありますね
三内丸山も温暖だった縄文期に冷涼な東北で発展しましたし。
ダイズやブドウの育種栽培もおこなわれていました
本書では縄文のことにはあまり言及していませんが。

少なくともアメリカで「文明」が発祥・発展したのは
オリノコ川やアマゾン川といった大河沿いではなく高地だったことは確かだそうです。

中央アメリカについては、栽培作物と狩猟採集のバランス比の推移がメインの論点ですね。
トウモロコシは原種から栽培種へ究極的進化を遂げており、
人間の手でないと育たないとのこと。

古代メキシコ展で疑問に思ったことなのですが、黒曜石文化にしては
日本のあらゆる縄文・弥生遺跡で出土する鏃がないのが不思議だったんです。
しかし本書掲載の食料獲得法の一覧を見てみると、
なんと中央アメリカの弓矢はAD1000年以降に出現しているんですね。
それまでは槍(アトラトル)を使っていたようです。謎が解けました。
しかし古代末くらいの時期にどこから技術が輸入されてきたんでしょう。
北アメリカかポリネシアか。


そのあとのアンデス・インカの記述にかなり力を注いでおられます。
重要な論点としてはアンデス高地文明の主要作物は「イモ類」であることです。

イモ類はトウモロコシよりも高地で栽培することができ、
本来持っている毒素で病害虫にも強い。
また、根に栄養を蓄える生態は寒暖差の多い環境で発達しやすい
という条件がそろっています。

毒多めのイモを高地の寒暖差環境で凍結・融解させ毒を抜き、
乾燥させた保存食「チューニョ」は
現在もアンデスの重要なエネルギー食となっています
(味もおいしいらしいのでジャガイモ好きとしては食べてみたい^^)
一方比較的低い土地で栽培されたトウモロコシは、
酒の原料として用いられることが多かったとのこと。

「イモを食べても文明はできない」という戦中戦後を体験した考古学者による偏見は、
裏を返せば、過酷な環境でもエネルギー源としてイモ類が有能であることを示しています。
スペイン人がインカ王国を見て驚いたことの一つは、
飢えたり物乞いをする人がいなかったとのこと。
イモによる文明の秀逸ぶりがわかりますね。

また、信仰では為政者の間の太陽神は有名ですが、今も土着で信仰され続ける
「ワカ」にも注目しています。
西洋では不吉とされる双子や逸脱した機能を持った人を大切にする信仰です
縄文時代も筋力が弱い方をみんなで助けて天寿を全うさせた様子がわかることから
共通する信仰があったことを示していそうですね。
また、日本の「ワカ」も沸か・若・和歌という神聖な意味がありますね。
神の名前で有名なのは『ホツマツタヱ』の「ワカ姫」ですね
(=ヒルコ姫・アマテル様とソサノヲ様の姉)
記紀で消されたものの、和歌を大成された重要な女神です。


チベットの記述に入ります。
チベットのエネルギー源は大麦の一種「ツァンパ」3000年前には栽培していた。
麦の初の栽培化はトルコ付近で紀元前7000年頃。その交雑種とされる。
地形的に多数の部族に分かれていたが、吐蕃が統一王朝を作る。
高地で活躍する(低地は苦手)ヤクを移動手段とした輸送ネットワークを用いて
統一された文明といえる。
チベット仏教が非常に根付いており、生活の中心にある。
その信仰が拡がっている地域が文明の範囲とみることができる。

文明は5千人以上の都市を持つことが条件とされるものの、
「都市を持たない文明」もありなのではないかという提言も
これはムラネットワークを駆使していた「縄文文明」にも通じますね

チベットで最初に見つかった旧石器遺跡は治多(ちた)県ココシリという名前。
とても日本語に近いと思いました。治多(ちた)は日本にも知多半島がありますね。
「ココ」は日本古語で菊のことを指し、言語の共通性が表れていますね。カムと
いう地名もあります。


最後にアフリカ高地のエチオピアに言及。
エチオピアは大まかに2つの高地と地溝帯で形成されていて、
民族も多様でキリスト教(高地)とイスラム教(周辺低地)に分かれる。
標高1000メートル以下はマラリアなどが蔓延しやすく、
あまり居住に適しているとは言えない。

麦の一種の「テフ」と根菜類の「エンセーテ」がエネルギー源となっている。
こちらも根菜によって発展した文明の一例になると思われる
エチオピアの農耕開始はBC4000-3000頃でアフリカ最古。
王朝は貿易で栄え、そのうち主要だったのは奴隷。部族を襲う「奴隷狩り」が調達した。
奴隷貿易を推進したのは、国の上層部でもあるということですね。
これも庶民の敵は国の内部のエリート層にいるという一例。
そして12-13世紀の岩窟教会群は目を見張るものがある(スピ系のネタにされたりする)

エチオピアでの最初人類の足跡は5万年前ということで、ほかの高地文明より古い。
エジプト系の地名の呼称に「クシ」があり、これも日本語を連想しますね。
日本において「櫛」「奇し」など神聖な意味も持ちます。
ホツマの神の名前にも何人か「クシ」がつく方がいらっしゃいます。
一番活躍されているのはクシヒコ様かな
(ソサノヲ様の孫、大国主と同一でニニキネ様の重臣)

まとめとして、改めて大河四大文明に疑問を呈します。
文明は固有の栽培作物によって社会を発展させたことが条件とされるが、
エジプト・インダス・黄河はいずれもメソポタミア発祥の麦を主要作物としている
なので真に文明発祥といえるのはメソポタミアのみで、
あとは周辺文明ということになるのでは。
※ただし黄河文明は麦に置き換わるまで粟・稗がメインでしたが

また、対作付面積エネルギー効率が麦に次ぐ第2位の米についての
考察が抜けている研究者が多いのも大問題。
米の栽培種発祥は長江流域とされるが、現実にはイネの原種が見つかっていないそうです。
文明は大河のほとり、というイメージにとらわれているのではないでしょうか。

日本の人文研究は高名な先生に追随するだけの傾向があることにも苦言を…



高地文明という視点が大変興味深かったです。
アンデス系の文明のことが特に丁寧に記述されていましたね。

ジャガイモもトウモロコシも、旧石器・縄文の日本とつながっている古代中央・
南アメリカ文明に生きた歴史には名を残さない人々の努力で、
今の利用しやすい食糧になっているのだと思うと感慨深いです。

高地文明と日本の縄文文明との比較研究もすでにあるかもですが、
この研究者さんが書かれると面白くなりそうです。


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プロフィール

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茶人(別HN:さいおん南)
性別:
女性
自己紹介:
2019年までは普通のアニメ映画好き。この数年で一気に裏情報を知った者です。一応歴史を専攻していましたがそれまではそこそこ。裏古代史を知って俄然やる気が出てきて、人生史上一番本を読んでます

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