会場は図書館とコミュニティセンターが合同になっているきれいな施設です。
部屋は狭いので机が使えないのが不便ですが、
聴講者を30名入れるためには仕方ないという気もします。
セシオン杉並ならもっと広い会場がとれるのかもしれないけれど
押さえるのが大変とも聞きますね。
杉並区の遺跡の全分布と今回ピックアップする遺跡に旗マークのある資料配布。
古い時代から順に紹介。今回講師の高田大幹さんは用語の説明から丁寧にしてくれていたので
知らない人にもわかりやすいし、とりあえず知っている私のような人は復習にもなります。
『考古学』とは「地球上に残る過去の人間活動の痕跡」であり、
恐竜の研究は『古生物学』となる
『遺構』は建物・溝・墓など土地に繋がっている不動産的活動の痕跡
『遺物』は土器・石器・木器・骨角器等動産的なもの
『遺物包含層』は遺構を伴わず遺物だけ出てくる遺跡 ※川に溜まった遺物など
【旧石器時代】
○高井戸東遺跡
武蔵野台地の最古級遺跡・局部磨製石斧が35,000-32,000年前の炭化木材が出た層から出土
【縄文時代】
縄文土器が浅鉢・深鉢以外に注口土器もあると今回は紹介されてました^^
土器の区分方法は2分類法
『型式学的方法』形・文様・技法で大別(分類単位を型式〈けいしき〉という)
その変化によって新旧を決める
『層位学的方法』地層の重なりで遺物の時間的前後関係を決める
○井草遺跡 井草式土器の標識遺跡として有名。12,000-11,000年前
発見当時は最古の土器だった
井草式土器の特徴は口縁部が厚く外反、外面に撚り糸文を付けている
○谷戸遺跡 『埋甕炉』(まいようろ)竪穴住居の真ん中に深鉢の下を打ち欠いて地面に挿し、
炉に転用した
○下高井戸塚山遺跡
昭和10年代と40年代に調査、公園になっているのでまとまった調査ができている
200軒の竪穴住居が直径100mの環状集落を成している。
真ん中は遺構がないので広場と見られている
☆環状集落の真ん中は葬送の場だと聞いているがどうなのか聞いてみたいかも
○光明院南遺跡 企画展も行った柄鏡型住居 3本の石棒の1本は炉石に転用している
土器片錘、底に網代痕のある土器も
☆そういえば柄鏡型住居って前方後円墳と似てますね…
◎向方南遺跡(今回一番の注目!)
神田川の流路に溜まった遺物の集積になっているため建物などの遺構は伴わないのですが
水につかっていたため浸食を免れていたという出土物がすごいです。
東村山の下宅部遺跡は縄文の漆製品が有名ですが、それに引けを取らないような
漆使用木製品が出ているんですね。
立派な高台付椀や籃胎漆器、竪櫛まで!(櫛の部分は風化しやすいらしく根元だけ残っている)耳栓や注口土器も。
これはぜひ特別展を企画していただきたい。
【弥生時代】
○鎌倉橋上遺跡 弥生時代の竪穴住居は隅丸長方形が特徴
壺・高坏・鉢・台付甕・小型壺&器台 のセットが出ている
○方南町峰遺跡 環濠集落・関東に来たのは弥生中期の2,100年前頃
杉並は争いの跡はないので防御ではなく境界が目的と思われる
○大宮遺跡 S44年、区内で初めて方形周溝墓が見つかった
土器は当初は墳丘上に飾られるがやがて溝に落ち、その状態で発見される
弥生式の壺・集落で出る土器より豪華、
かつ底に穴が開いているので壺としては使えない=祭祀用
先日観に行った弥生時代企画展では50年ぶり!に遺物がそろった状態で
展示されていた機会だったとのこと
○堂の下遺跡 こちらも方形周溝墓出ている 杉並では水田遺構は未発見だが、
籾圧痕がある土器がの出土で稲作の証明になっている
【古墳時代】
○高千穂大学大宮遺跡 S37年の「杉並区史」には古墳が30基あったが
すべて消滅していることが書かれている
☆これは知りませんでした!
5Cと思われる1基の円墳の溝から土器・めのう・埴輪のかけらが出ている
○済美台遺跡 6C後半 滑石製模造品で鏡を模したものが出ている。
穴にひもを通して木に括りつけたともいわれる
○釜寺東遺跡 住居内から土師器・甑・長胴甕&支脚
○熊野神社南遺跡 1辺7m・区内最大の住居。かまど登場 煙を住居外に出すのが画期的である
甑の使い方は、底が抜けているのですのこを敷くなどして下からの蒸気で米を蒸す
☆甑の詳しい使い方を説明してくれた講演はなにげに初めてでした
○和田中学校遺跡 耳環が出ている 普通の住居から出ているので貴族以外もつけていた模様
【古代】杉並の遺跡は減少。○向山遺跡 墨書土器が出ているが解読されていない
中世はほとんど遺跡がないとのこと
【江戸】○阿佐ヶ谷本村遺跡 近世の井戸 など
【近世】○荻外荘(てきがいそう)今年10月公開予定の近衛文麿旧宅
30分時間オーバーで最後は超高速でしたが、近現代まで言及してくれた感じですね。
縄文時代にかなり尺を取っていたので良く最後までやってくれたなあと感心。
小学生の子がお母さんと来ていましたが頑張って最後まで聴いていました。
事前アナウンス通り、杉並の上古代遺跡についての理解を深めるのに
最適な講演会だったかと思います。